農業は大きく分けると作物を栽培する耕種農業と、動物を飼育する畜産農業に分けられます。今回は、耕種農業について詳しく見ていきましょう。
耕種農業って?
田畑を耕して種をまき、作物を栽培する農業スタイルが耕種農業です。
米・麦・野菜・果樹・花など、耕種農業の範囲は広く、ほとんどの農家が当てはまるでしょう。
ただし、天然性のしいたけ、たけのこ、わさびなどの採取・用材または薪炭材の生産を主な目的とした植物の栽培は耕種農業には該当しませんが、肥料をあげて栽培するようなら耕種農業に当てはまります。
栽培する作物によって、畑作・野菜、施設園芸、果樹に分類されています。以下でそれぞれを見ていきましょう。
耕種農業の種類
稲作
日本人の主食であるコメの栽培が【稲作】です。一般的には水を張った田んぼに苗を植える水田稲作が知られていますが、畑で育てる陸稲もあります。
有名な品種にコシヒカリが挙げられますが、時代の流れとともに品種は多様になり、ブランド米を育てる地域が多くなっています。地方自治体もブランド化を後押しする動きが見られていますが、輸入米に押されているなかでの営農は厳しい状況です。
畑作・野菜
畑で農作物を栽培するのが【畑作・野菜】です。穀類・雑穀・豆類・イモ類など、とても幅広く、稲作とともに日本人の食卓を支える重要な役割を担っています。機械化が進んでいるので、畑作を行う女性起業家なども増えてきました。
出来の良い作物を栽培するには、土づくりが肝心です。適切に肥料を与えて、土壌の酸度を調整する必要もあります。
また、同じ作物を栽培し続けると生育不良が起こる(連作障害)のを避けたり、種類の異なる作物を一定期間同時栽培する間作などを行ったりするなど、始める際に学んでおきたい知識はたくさんあります。
施設栽培
ガラス張りの温室やビニールハウスで栽培するのが施設栽培です。一般的には野菜や果樹の栽培が多く、種類は豊富です。なかでも、トマトやスイカ、メロン、イチゴなどは施設栽培で多くつくられています。
天候に左右されない栽培方法ですから安定的に栽培・出荷できるのは施設栽培の強みです。時期に関係なく出荷できますし、露地栽培では育たない作物の栽培もできます。ただし、冬季間の栽培は、地域や作物によっては施設内を温める必要があり、灯油代などのコストが発生します。
露地栽培
畑で栽培するのが露地栽培です。施設栽培とは異なり、天候に大きく左右されるのはデメリットと言えますが、日光をダイレクトに受けるので元気な作物を育てることができます。
露地栽培では、白菜やキャベツ、大根など寒さに強く霜の被害を受けにくいものが適しています。
施設園芸
施設園芸は施設栽培と同じく、ビニールハウスなどで栽培する方法ですが、ここでは野菜などは省いて「花卉(かき)」の栽培に絞って説明します。
主に鑑賞の植物を栽培するのが仕事で、母の日やクリスマスなど、季節によって需要が高まりやすい職種です。
1年を通じて安定して出荷するためには室温を適切に保つ必要があり、燃料代がネックになります。花き農家の多くは経営を続けるなかで燃料費が経営費用の大部分を占めるため、いかに省エネ化を進められるかが肝心でしょう。
果樹
こちらは文字通り果物の栽培です。日本国内では100種類以上の果物が栽培されているといわれており、地域によってその種類は異なります。
果樹農家にとって大敵は台風や害虫、病気です。特に毎年のように各地で見舞われている水の被害は果樹農家にとって大きな被害をもたらしています。異常気象といわれていますが、もはや異常ではありません。
今後も続くであろう天候不順にどのように対応していけるかが果樹農家の収入を大きく左右するでしょう。
耕種農業の年収
総務省が発表している平成30年度の営農類型別経営統計(個別経営)を見ると、農業全体の平均収入は174万円(粗収益は626万円)です。以下は耕種農家それぞれの部門別に平均収入を調べてみた結果です。
稲作所得:約56万円(粗収益:約265万円)
畑作(北海道以外):約153万円(粗収益:約508万円)
施設野菜:約508万円(粗収益:約1292万円)
露地野菜:約244万円(粗収益:約640万円)
果樹:約254万円(粗収益:約642万円)
畑作で北海道以外としているのは、北海道は収益額がけた違いに大きいため、含めてしまうと平均額が上がってしまうためです。
ざっくりと見ると、稲作や畑作は収益性が悪く、収納するなら施設野菜に注目する必要がありそうです。
なお、ここで紹介した金額は、地域性や就業年数、環境、条件によって大きく違ってくると思います。実際、1000万円プレイヤーの農家さんの話もよく聞きますよね。
栽培する作物の選び方、実際の栽培方法、販売方法などで農家の収入は天と地ほどの差があるのかもしれません。
参考:農業経営統計調査
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