畜産農業は、主に家畜の飼育と生産を行うというイメージが強いかもしれませんが、酪農や養蚕、養蜂も畜産農業に含まれます。
今回は、畜産農業について種類や年収などを見ていきながら、日本国内における畜産農業の現状と未来を紹介します。
畜産農業とは?
畜産農業とは、牛・豚・鶏をはじめ、いのしし・馬・鴨・めん羊など、動物のなかでも家畜・家禽を飼育、肥育、ふ卵する業種を指します。そして、養蜂や養蚕、毛皮獣や実験用動物などの飼育も畜産農業に該当します。
なかでも、私たちの暮らしに馴染み深いのは家畜の飼育と販売でしょう。日本国内で消費される主な肉類の1人あたりの消費量は、牛肉が7.2㎏、豚肉が23㎏、鶏肉が18.8㎏で、3種類を合わせると49㎏もあります(2020年時点)。
1日あたり130グラム以上ということですから、私たちの食生活になくてはならない存在ですね。
畜産農家の主な仕事内容は、それぞれの家畜の特性を熟知し、成長をコントロールすること。たとえば、肉用牛を扱う畜産農家では、子牛の出産から生後9カ月頃まで育ててから出荷する「繁殖農家」と、子牛を約30カ月前後まで大きく育ててから出荷する「肥育農家」があります。
繁殖も肥育も、牛の健康状態を把握することが欠かせない仕事で、さらに生育環境を整えてストレスをかけないように育成することが大切です。
畜産農業の種類
畜産農家が主に扱う家畜は以下の種類です。
①乳用牛
国内で最も多く飼育されている乳用牛がホルスタイン種で、割合は99%以上です。黒と白のまだら模様でおなじみですね。次がジャージー種で、主に岡山県で飼育されています。ジャージー種は、乳量は少ないものの、乳脂肪分が高いといわれています。
②肉用牛
肉専用種(和牛)、乳用種(国産若牛)、交雑種(F1)の3種の区分があります。
主な肉専用種(和牛)は、黒毛和種、日本短角種、褐色和種、無角和種の4種。このうち、黒毛和種が最も多く流通していて、霜降りの高級牛肉としても知られています。
乳用種(国産若牛)は、ホルスタイン種の雄牛です。繁殖するために欠かせない雄牛ですが、乳を出すことはできないので肉用種として出荷されます。
交雑種(F1)は、黒毛和種とホルスタイン種を掛け合わせたもので、肉質が向上しています。
③豚
日本国内で飼育されている豚は主に4種類です。大ヨークシャー種は、イギリスが原産地。赤肉の割合が高く、主に加工品として利用されています。パークシャー種もイギリスが原産地で、発育は遅い物の肉質が良いといわれています。国内では主に鹿児島県で生育されています。
ランドレース種はデンマーク原産で、発育の早さ、背脂肪が薄く赤肉率が高いのが特徴です。デュロック種はアメリカ原産で、褐色の体つき、しゃくれた顔が特徴です。
④鶏
卵を生産する卵用種、ブロイラーなど肉用として飼養される肉用種、両方に利用される卵肉兼用種があります。
ちなみに、1年間で消費する鶏卵の戸数は、昭和35年に1人あたり121個でしたが、平成16年には1人あたり318個となっており、約2.6倍に増加しています。
畜産農家の年収
農林水産省の農業経営統計調査によると、2019年の酪農経営農家1戸あたりの農業所得は820万円、法人経営では2,378万8,000円となっています。法人経営の金額多いように見えますが、これにはカラクリがあります。
個人経営の場合は、農業従事者数が4.81人で820万円なので、1人あたりの所得は約170万円です。法人の場合は農業従事者数が12.48人で2,378万8,000円なので、1人あたりの所得は約190万円です。総所得では大きな開きがありますが、1人あたりの金額でみると20万円ほどの差になります。
また、繁殖牛経営農家の所得は約329万円、肥育牛経営農家の所得は約232万円、養豚経営農家の所得は約587万円、採卵養鶏経営農家の所得は約66万円、ブロイラー経営農家の所得は約674万円です。まとめると以下のようになります。
営農類型別経営統計に見る農家1戸あたりの農業所得
- 酪農経営農家…820万円
- 繁殖牛経営農家…約329万円
- 肥育牛経営農家…約232万円
- 養豚経営農家…約587万円
- 採卵養鶏経営農家…約66万円
- ブロイラー経営農家…約674万円
畜産農家におすすめの人
まず、動物への愛情をもって接することができ、きめ細かい世話ができる人でなければ勤まりません。いずれは出荷する家畜とはいえ、愛情がなければ健康な体に育てるのもできないでしょう。
また、他人と接する機会が比較的少なく、家畜と接する時間のほうが長いので、コミュニケーション能力よりは管理能力のほうが重要なスキルです。
朝起きてから寝るまで同じサイクルになる傾向にあるので、ルーティンワークが得意な人にも向いているでしょう。
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